床ずれ(=じょくそう。このサイトでは褥瘡でなく、褥創と表記します)を予防するために、羊毛製品が役に立っているのをご存知でしたか?
衣食住とさまざまなシーンで活躍する羊(毛)。人と羊は昔から切っても切れない仲。最先端の科学が活躍する医療の分野でも、実は例外ではありません。とりわけ、床ずれ予防の分野ではウールの持っている吸放湿性が大変期待されています。


お願い:このホームページの内容は、ウールと介護の関係について、ウールの立場からわかりやすい解説を加えたものです。 記載された内容は一般的なものであり、すべてのケースを網羅するわけではありません。
現在治療を受けている方、実際に介護をなさっている方は、治療・介護方針について主治医やケアマネジャーなど関連する方とよく相談頂くことをお勧めします。

 
床ずれとは
同じ姿勢で長時間寝たり座ったりしていると、寝具や座面と接する部分への血行が悪くなります。 一般の人であれば、無意識のうちに体を動かし血行を回復させます。いわゆる「寝返り」などですね。
しかし、寝たきりに近い人になるとそれもままならず、血行が悪いまま放置すると、組織に栄養が届かなくなります。その結果、組織が壊死してしまう事を床ずれ(褥創=じょくそう)といいます。最初は赤くなる程度ですが、ひどくなると体に穴が空いたようにぽっかりと空間が出来てしまいます。ひとたび床ずれになると、なかなか直りません。感染の恐れもあり、床ずれを予防することが重要です。
  
  床ずれの段階
段 階
症状 対策
第1段階
皮膚が赤くなり、消えない体位変換、床ずれ予防寝具
第2段階
水ぶくれ、びらん↑+医師指導による手当
第3段階
下組織にまで届く壊死↑+医師による傷口手当
第4段階
筋肉や骨に達する組織壊死入院治療
 わかりやすくするために簡略化してあります。実際に症状のある方は、必ず医師の指導を受けてください。
 
床ずれの原因
 床ずれの原因は大きくは3つあり、圧力、ムレ(湿潤)、摩擦だといわれています。
これ以外にも食事(栄養状態)なども関係しいて、単純に「体圧分散」すればいいというものでもなく、複雑です。一般の人は、ずっと寝ていても無意識のうちに体を動かしているし、栄養も十分摂取出来ているので、床ずれになることはありあません。しかしお年寄りで体を自由に動かせないようになると、往々にして栄養状態も悪くなり、汗の影響で皮膚がぬれた状態になりやすいことから、床ずれの予防を講じる必要があります。
図1 床ずれの要因
 
現状の床ずれ予防方法

床ずれ予防する方法として、大きく分けると素材別に以下の4つの方法があり、それぞれに特徴があります。
どの方法も一長一短があり、状況によって最適な方法を選択することになります。現状では、体圧を分散するものが一般的で、快適性にもつながるムレ防止を主眼に置いたものは、シープスキン程度しか見当たりません。
最近ではデメリットを克服すべく、さまざまな機能的な商品が登場しています。全体的な傾向としてのメリット/デメリットも記載しておきますので、ケアや、あるいは商品選択の参考にしていただければと思います。当然ながら、主治医やケアマネジャー等、専門家のアドバイスや意見をまず第一に尊重されることをお勧めします。

 
エアーマットウレタンマット ジェルマットシープスキン
 
 
●エアーマット
床ずれを予防するのに一番有効とされているのが、圧力を分散させ、一カ所に大きな負荷がかからないようにする「体圧分散」です。
エアーマットは体圧分散に特化した床ずれ予防寝具で、予防のみならず、重度の床ずれに対して絶大な効果を誇ります。
一方で、塩化ビニール等のチューブに空気を入れたマットの上で寝ることになりますので、船酔いのような症状になったり、人によっては寝返りが打ちにくくなったりというデメリットも指摘されています。
価格も高価なものが多く、機能もさまざまなので、床ずれの症状、段階に応じて適切な商品を使用すうことが重要です。
体質により、あるいは、使用状況によっては蒸れる場合もあるようです。
 
●ウレタンマット
また、ウレタンのマットを使って体圧を分散する方法もあります。一般的に比較的安価な上、取り扱いも容易であることから、広く普及しているようです。
床ずれの三大要因のうち、圧力要因は改善されます。しかし、ウレタン素材自身には吸湿性がなく、素材としては蒸れる傾向がありますので、通気性を重視したもの、多層化したものなど、商品の選択には蒸れにくいものを選ぶ注意が必要です。
一般論として、ウレタンは万が一の火災の際には、大量の有毒ガスを発生し、健常者でも往々にして一酸化炭素中毒による生命の危機に繋がりますので、火災の恐れのあるところでは使用を控えたほうが安全といえるでしょう。
 
●ジェルマット
ジェルを注入したマットも床ずれ防止用具として使用されています。
最大の特徴はお手入れが簡単なこと。汚れてもさっーと拭くだけできれいになります。一方、欠点は非常に重いこと。
さらに、透湿性が無い上に、表面がフィルム状であるため通気性が無く、人によってはムレることもあるようです。重量、価格の面からか、全身用として用いられることよりも、部位に応じて異なるサイズのものを使うことが多いようです。
 
●シープスキン(ムートン)
シープスキンは、文字通り羊の革で、「ムレ」を防止するのが最大の特徴です。ムレないので、快適です。また、平方センチあたり、5千本といわれる羊毛が体圧を分散し、床ずれ防止に大きな効果が期待出来ます。ただ、お手入れがしにくく、価格が高めであることが難点です。日本での普及は始まったばかりですが、羊との接点が多い欧米社会とりわけ羊大国オーストラリアでは、導入、研究も進み、対費用効果の計算などもでています。全身サイズ以外にも、1匹ものや2匹ものが使われることもあります。
最大の特徴は、なんと言っても、気持ちいいこと。暑くなく、寒くなく、 快適な寝心地は、健常者でも使いたくなります。
全身用のマットの他、部位に合わせて使う円座や、手足に使うタイプのものなど、さまざまなタイプがあります。ウールマークのホームページでも購入できます。
以上各商品の画像は、株式会社ウィズの福祉用具総合カタログ「ベストケア」Vol2より転載させていただきました。
 
今後の床ずれ予防
 介護が社会問題化するに従い、「QOL(Quality of Life=生活の質)の向上」や「尊厳」といったテーマが浮上し、今まで「介護する側の都合」で行っていたサービスを「介護を受ける本人主体」のサービスに切り替えるようになってきました。

この観点から、「ムレ」にも焦点があたり、手入れが大変だとあまり普及してこなかったシープスキンにも普及に広がりが見えるようになりました。「ムレ」は単に床ずれの要因というだけでなく、快適性と大きく関わっています。
 
健常者であれ、寝たきりの老人であれ、ヒトには代謝による熱が発生し、その熱は汗の蒸発により気化熱として、体から放散されます。「ムレ」があると、汗が蒸発せず、体から熱が逃げないので、蒸し暑くなり、体調が維持しにくくなるのです。お年寄りの場合には代謝による熱生産も少ない代わりに、恒常性(体を維持する機能)も低下しているので、汗が溜まるような環境は大変な負荷になっています。
ウールを使った介護商品「肌ナース」
 
床ずれを予防するのはとても大切なことですが、それが全てではありません。「より快適な介護を受けること。介護を受ける本人が満足すること。」そういった介護の質と、シープスキンやウールのもたらす快適性は密接に関連しています。
こういった流れを受けて、ウールマークではウールを使った介護商品の開発にも力を入れています。
平成15年度中小繊維製造事業者自立事業 助成金対象商品として、「肌ナース」の開発を辻寛敷物株式会社と共同で進め、最終製品を介護用品で最も大きな展示会である第31国際福祉機器展(HCR2004)にて発表いたします。
 
羊毛製品と介護
 羊毛は繊維製品中、最大の吸湿率を誇る、繊維の王様です。この特徴は、ムレの原因となる湿度を低下させ、他のどの繊維よりもムレを防ぐことができます。そして羊毛の持つ、繊維の縮れ(クリンプ)が、適度な反発力をもたらし、体圧をうまく分散します。だから、羊毛は介護に向いているのです。

この特徴は、体力の低下が見られる介護という状況において、その効果を如何なく発揮しますが、もちろん、健常者=介護する人や、一般の人全てにも共通して言えることです。
蒸れないことは、快適なのです。蒸れない快適さを追求すると、シープスキンを始め、様々な羊毛製品に行き着きます。快適な寝具は熟睡をもたらします。 その一例をご覧ください。、ウール毛布は睡眠中の心拍数がアクリル毛布よりも低く、より熟睡できることが著名なホーエンシュタイン研究所により証明されています。 また、最新の研究ではウールの敷きふとんはポリエステルの敷きふとんより眠りが深い傾向にあるという研究結果も出ています。
 
 
図2ウール毛布の心拍数の方がアクリル毛布よりも少なく、熟睡していることがわかる。
 
あるいは、冬山での遭難事故でも羊毛の肌着を着ていた人は助かり、綿の下着を着ていた人は助からなかったという事例が何例か報告されていいます。(ウールマークマンスリー386号より1例のみ引用、武庫川女子大 故安田武名誉教授の研究より)
体力が低下し、極限の状況では、ウール製品が命を救うこともあるのです。体力が低下しているのは寝たきりのお年寄りも同様。
 
ウール製品がすこしでもお役に立てるようにウールマークは介護分野に積極的に取り組み、ライセンシーとの共同研究、共同商品開発に取り組んでいます。
●間ノ岳遭難(1962年11月4、みぞれ)
 
肌着
シャツ
セーター
上着
雨具
結果
Z
綿
あり
あり
作業衣
ヤッケ
死亡
B
綿
あり
なし
キルティング
ヤッケ
死亡
Q
綿
あり
あり
あり
ヤッケ
死亡
P
綿
あり
あり
キルティング
雨ガッパ
死亡
A
あり
なし
キルティング
なし
生還
表1 間ノ岳遭難者の着衣について
 

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